認知症でも遺言書は作れるか
2015年10月21日
東京都世田谷区の司法書士事務所クラフトライフと申します。
弊所は、遺言・遺産相続に専門特化した司法書士事務所です。
遺言をするためのルール
いきなりの結論となりますが、遺言をするのに当たり必要なルールは、次の2つのみです。
- 満15歳以上である事。
- 作成時に、遺言能力(意思能力)がある事。
従って、認知症を患っていても、遺言は出来るのです。(※意思能力については、例えば、りんごを買う契約をしたら(行為)、りんごが自分の物になりますが、お金を支払わなければなりませんね。
(結果)このように、自身の行為の結果を認識する能力を指すとお考えください。)
では、認知症である事は、遺言をするに当たり問題は無いかと言いますと、そうではございません。
問題1.成年被後見人の遺言
認知症を患う方によっては、成年後見制度を利用されている方もいらっしゃいます。この場合、遺言をするには、法定された方法による必要がございます。即ち、次の方法です。
1.被後見人が、事理弁識能力(意思能力)を一時回復した時にする事
2.医師2名以上の立会い
3.立ち会った医師による、1の要件を満たしていた旨を遺言書に付記し、署名、捺印する事
なお、1の回復した時とは、次の通りです。
自筆証書遺言:全文、日付、氏名を自書し、捺印する時点
公正証書遺言:公証人に遺言の趣旨を口授する時点から、公証人による署名・捺印がされるまで継続している事
問題2.遺言能力の有無
成年被後見人となっていない場合には、法律上は、認知症である事が遺言の作成方法に影響する事はありません。認知症とは無縁な、意思明瞭な方と同様に、遺言を作成する事が可能です。しかし、ここで問題となるのが、そうして作成された遺言の効力です。遺言者が亡くなる事により、遺言は当然に効力を生じますが、その効力を巡り争いになった場合に、裁判により無効とされる事があるのです。では、どうすれば良いのでしょうか。いずれの問題も共通するのが、遺言能力です。対処方法をご紹介致します。
遺言が無効とされないために
内容なシンプルに
複雑な内容の遺言であればあるほど、遺言能力は高度なものが要求されます。そのため、遺言の内容は、短く、シンプルにする事。
証拠を残す
書面や映像で、遺言者の状況や、医師の判断などを残し、遺言能力があった事を証明する証拠を残す事。
被後見人でなくても、方式に従う
問題2のケースでは、医師の立会い等、法定された方法によらずとも遺言が可能です。しかし、この場合も、同様の方法による事で、遺言が無効となるリスクを抑える事が出来るでしょう。
公正証書遺言の利用
公正証書遺言であれば大丈夫という事ではありませんが、公証人が関与しますので、自筆証書遺言よりは安全性が高いと言えます。
認知症の方が遺言書を作成する場合
上述した通り、認知症であっても遺言書は作れます。但し、その有効性を巡り、後に争いとなるリスクは、否定できません。争いとなった場合に、どういった事が争点となるのかを理解していなければ、これに対処する事は困難となります。認知症の方が遺言を作成される場合には、必ず、これに対処が出来る、弁護士か司法書士に相談される事をお勧めいたします。