遺言執行の危険性
2016年2月11日
東京都世田谷区の遺言・相続の専門家、司法書士事務所クラフトライフと申します。
近年、遺言書を作成される方が増加しています。
弁護士や司法書士といった専門家の他にも、金融機関やシニアマーケットを対象とする事業者による広告等により、
遺言書の重要性の認知が広まっている事が要因の一つでしょう。
さて、今回は、遺言書で定める遺言執行者についてです。
遺言執行者とは、簡単に言えば、遺言書の内容のうち、一定の事項を実現するための者であり、必要不可欠な場合がございます。
遺言には、遺言執行者でなければ実現できない内容があり、遺言で遺言執行者を定めていない場合には、相続発生後、裁判所に選任を申し立てる手続きが必要となります。そうなると、相続の手続きが滞りますから、スムーズに進むように、遺言で遺言執行者を定めるケースが多いでしょう。
しかし、遺言の執行には少々危険性があります。
身寄りのない方等の危険性
身寄りのない方が遺言書を遺す際、財産を公益事業者等に寄付する事もあるでしょう。
この場合、遺言の内容を実現するには、遺言執行者の選任が必要となります。
なぜ危険か
遺言執行者には監督機関が無い
遺言執行者には、監督する者が存在しません。
相続人がいれば、事実上、相続人による監督が入る事となるのですが、身寄りのない方の場合、これがありません。
つまり、身寄りのない方の場合、死後に自身の財産が適切に処理される保証がないのです。
遺言執行者には資格の制限はない
遺言執行者は、極めて大きな権限を持ち、その職務は重大なものです。
しかし、上述のとおり、監督機関は存在しません。
更なる問題点として、遺言執行者は、未成年と破産者のみ欠格事由とされており、専門家でなくてもなる事が可能なのです。
専門家による財産の横領があれば、それはニュースとなり、公に知られる事となりますが、ご家族等の場合、公にならない事がほとんどでしょう。
対処方法は
こういった問題にどう対処すれば良いのでしょうか。
遺言執行者は弁護士か司法書士を選任する
弁護士、司法書士であれば、行政書士等、他の専門家に比べ、法的知識、職業倫理、団体自体の自浄能力の面で信頼に足るでしょう。
遺言執行者を複数名選任する
互いに繋がりの無い遺言執行者を複数名選任し、相互に監督させるのも、安全性の確保につながるでしょう。