資産凍結対策の家族信託 不動産が売れず、老人ホームに入れない!
認知症等、判断能力低下に伴い、資産凍結状態となってしまう事を防ぐための家族信託です。資産凍結状態とは、定期預金解約等銀行手続きが行えなくなったり、不動作の売却や建替え等が出来なくなったりする状態です。
認知症に伴う資産凍結状態で困った事例
有料老人ホーム入居のために自宅を売却しようとしたが出来なかった
Aさん75歳。78歳の夫と、50歳の長男、51歳の長女の4人家族です。長男長女の子二人はそれぞれ結婚、別個に住んでいます。夫には数年前から認知症の気があり、最近では、症状が重篤になってきています。Aさんは、これを機に、介護付き有料老人ホームへ入居しようと決意しました。都内の自宅から比較的近く、安い有料老人ホームを探し、相談に行ったところ、初期費用が700万円ほど、月額費用が二人合わせて30万円程との説明を受けました。
Aさんと夫の預貯金等の金融資産は、合わせて1,000万円程、年金が年間240万円程で、数年で支払えない状態になってしまいます。
そこでAさんは、自宅不動産を売却する決意をし、不動産業者さんに相談に行ったところ、6,500万円程で売れると査定が出ました。Aさんは、簡単に、将来生活をシミュレーションしてみました。
- 不動産売却後の預貯金の額は、売却諸手続き費用を500万円と仮定すると、6,500万-500万+1,000万=7,000万円
- 年金は、毎年二人合わせて240万円、仮に20年生きたとすると、4,800万円を受け取る事となる。
- 有料老人ホーム費用は、二人合わせて月額30万円。年間にすると360万円で、20年生きたとすると、7,200万円
- 有料老人ホーム費用以外に掛かるお金を、二人合わせて月額10万円。年額120万円で、20年生きたとすると、2,400万円
7,000万円+4,800万円-7,200万円-2,400万円=2,200万円
これであれば、十分に安心して暮らしていける。Aさんは安堵しました。
しかしながら、不動産売却手続きが進み、不動産の名義人である夫と不動産業者さんが面談した時に問題が生じました。夫は、会話が支離滅裂で、自身の住所も言えない・書けない状態ためです。契約自体が出来るかどうか、不動産業者さんは、司法書士に相談し、司法書士が面談したところ、判断能力を明らかに欠いていると考えられ、かつ、住所氏名も自署できない以上、契約不可と断定されてしまいました。
こうして、Aさんの描いた有料老人ホーム入居は、断念する事となったのです。
問題点
問題点は、不動産の名義人である夫の認知症が進行した状態で、判断能力を欠く事が明らかな状態になってしまっていた事です。不動産売買は、法律行為であり、法律行為には、意思能力(判断能力とお考え下さい)が必要で、これを欠いた法律行為は無効です。そのため、不動産の売却は出来なかったのです。
家族信託による対策
夫がまだ元気なとき(認知症の症状も軽度であれば可)に、家族信託契約をしておけば、夫の認知症がどれだけ進行しても、問題なく売却が可能でした。
契約概要の例は次の通りです。
- 長男と夫の間で家族信託契約を結ぶ
- 信託財産は、自宅不動産+預貯金の一部
- 長女を受益者代理人とする
- 受益者代理人の書面承諾を不動産売却の条件とする。
契約内容は人それぞれ
家族信託契約は、ご家族関係やご家族の状況、財産の額や内訳、収支状況、将来生活の希望等、様々な個別上に応じて適した内容を検討する必要がございます。ある程度の時間を要し、また、複雑な契約である事から、判断能力が衰えてくると理解が出来ず困難となりますので、お早めに専門家にご相談下さい。
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