高齢賃貸アパートオーナーの家族信託事例
- 79歳で不動産賃貸業を営むAさんには子がおらず、法定相続人が甥姪等となり多数。
- Aさんは、最近もの忘れが多くなり、理解力も低下してきたという自覚がある。
- 姪のBさんが財産管理等の支援をしている。
- AさんはBさんを信頼している一方で、全てを委ねる事に一抹の不安をお持ちである。
- Aさんは長年の不動産賃貸業の経験から、不動産の目利きには現在でも自負がある。
- AさんはBさんにほぼ全ての遺産を相続させたいと考えている。
- 収支状況は大きく黒字。年金は少ない。
- 不動産多数。金融資産は多額にある
- サービス付き高齢者向け住宅の入所を検討している
- Bさんの家族構成は、夫と成人している子が二人
- Aさんは、Bさんの配偶者であるCさんまで信頼しているわけではない。
- 税対策も二次的に行いたい
- AさんはBさんを養子とする事を検討している
家族信託を組むべき理由
この事例では、年金が少なく、不動産賃貸収入により生活収支が成り立っていたため、認知症等による判断能力低下の備えが必須でした。また、諸事情により所有不動産の幾つかを数年以内に売却する事が決まっており、それを原資に更に不動産投資を行う事をご希望であった事から、家族信託による対応となりました。
任意後見契約では対応出来ないと考えられる
積極的な不動産運用は後見制度の主旨に反するため困難です。任意後見であれば、契約内容において裁判所の許可を要する旨の定めを置かなければ、居住用不動産を含む不動産の運用が形式的には可能となりますが、任意後見監督人及び裁判所への報告をする必要があり、後見制度の本来的な主旨にそぐわない財産管理に否定的な見解を取られてしまう可能性が考えられます。この点、家族信託であれば、その目的において不動産運用が可能な定めを取る事で、積極的な運用が可能となります。
信託契約概要等
- Aを委託者兼受益者、Bを代表とする一般社団法人を受託者
- 信託期間をAの死亡まで
- 信託目的を第一にAの生活確保、第二にBへの円滑な遺産承継、第三に資産活用とする
- 年金等信託財産外預金の処理は指定代理人制度を利用
- 受益者代理人に専門家を置く
- 一般社団法人の役員に顧問税理士
- 信託及び受益者代理人就任の効力は契約当初から
- 一部重要事項意思決定については、受益者又は受益者代理人の承諾を要する
- 公正証書遺言で個有財産処理
- 養子縁組は相続税基礎控除の関係から行わない
- 生前贈与保険による生前贈与を行う
- 生命保険死亡保障枠を最大額まで利用
- 共有状態にある不動産は共有物分割によって事前処理
- 医療・介護等費用は信託財産より直接支出を可能にする
任意後見契約は利用しなかった
本件では、任意後見契約は利用しませんでした。信託財産外預金については指定代理人制度により処理が可能であり、介護施設等介護関係の契約は第三者が本人に代わって契約出来る事が多く、将来入所を検討している施設もこの形でした。(第三者のためにする契約と捉えても受益の意思表示が出来ない状態であれば不可であり、法律的には疑義がある。)
インターネット等を見ていて、よく家族信託と任意後見、遺言をセットでとの意見を拝見しますが、社会実態として、後見人不在でも面倒を看る親族がいれば差し支えない状況であるように思います。ただ、兄弟姉妹に子のいない方がいらっしゃり、その兄弟姉妹が遺言を遺していないような場合、遺産相続の当事者となる可能性がございます。この際、相続放棄をするにしても、遺産相続するにしても、判断能力がないと不可であるため、こういった事情も踏まえる必要がございます。本件ではこのような事情はなかったため、医療・介護業界における現状及び厳格化される可能性等説明の上、任意後見は利用しない形となりました。
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