福祉型信託~障害を抱えたお子様のための信託~
障害を持つお子様を抱える家庭では、ご自身が亡くなった後に誰がお子様の面倒を見るのか不安を抱えている方が多いと思います。こういった障害を持つお子様を抱える家庭での問題を「親亡き後問題」といいます。この「親亡き後問題」に有効な方法として福祉型信託があります。
福祉型信託が有効な事例
最近奥さまを亡くされたXさん(74歳)には3人のお子様がいます。長男Aさん(54歳)はXさんと同居しており重度の障害を持っています。長女Bさん(50歳)は結婚して遠方におり、二女Cさん(46歳)は近所ではありますが、結婚して別居していました。これまでAさんの面倒は、亡くなられた奥さまがみてきたため、奥さまが亡くなってからXさんはどのような手続を行っていいかわからず、成年後見制度を利用することになりました。成年後見制度の利用により、司法書士が成年後見人に就くことになりました。
成年後見人が就いてくれたおかげで、Aさんの財産管理は安心ですが、Xさんはこの度奥さまが亡くなられたこともあり、ご自身が亡くなった後にAさんの面倒を誰が見るのか心配になっていました。
二女のCさんは近くに住んでおり、よくAさんの面倒は見てくれていますが、CさんにはCさんの家庭があるため、Xさん自身に何かあった時に、経済的部分であまり負担をかけたくないと考えています。
Xさんの希望としては、ご自身に何かあった時に備えてAさんの生活に必要なだけのお金を残したいし、またAさんの面倒をよく見ているCさんにも多少多めにお金を残してあげたいと考えています。
今回の問題のポイント!
1.障害を持つお子様の財産管理には成年後見制度が有効です!
障害を持つお子様がいる家庭でも、必ずしも成年後見人は必要ではありません。ご家族の誰かが障害をもつお子様の面倒を見れば、一般的な生活をする上で特段大きな問題は生じません。
しかし、今回のように、障害を持つお子様であるAさんの財産管理を奥さまがされていて、奥さまが亡くなってしまった場合、Aさんの財産の管理は、お父様であるXさんが急に行うことになり、その管理の移行がスムーズにいかないことがあります。そのため、例え現在元気であったとしても、成年後見制度を利用することをお勧めします。
2.資産承継には信託が有効な場合があります!
今回、Xさん何も対策をせずに亡くなった場合、AさんはXさんの相続財産の3分の1を取得することができます。これでAさんが生活していく上で、十分なのであれば何も問題はありませんが、十分でない場合に問題となります。
福祉型信託による対策
Xさんの一定の預貯金を信託財産として信託を組むことで、Xさんに何かあった時でも、Aさんのために継続的に金銭的な供給をすることができます。
また、Aさんが亡くなった後,残った財産をお世話していたCさんの家族へ残すことができることから、信託はとても有効な方法といえます。
契約概要としては以下のとおりです。
XさんとCさんの間で家族信託契約を締結。
信託財産は、Xさんの預貯金の一部。
残余財産の帰属権利者としてCさん又はCさんのお子様を指定。
契約内容は人それぞれ
家族信託契約は、ご家族関係やご家族の状況、財産の額や内訳、収支状況、将来生活の希望等、様々な個別上に応じて適した内容を検討する必要がございます。ある程度の時間を要し、また、複雑な契約である事から、判断能力が衰えてくると理解が出来ず困難となりますので、お早めに専門家にご相談下さい。
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