家族信託とは
家族信託とは
家族信託とは、主に、ご自身の財産の管理、運用等を、任意の第三者に任せる制度です。主な登場人物は次の通りです。
- 財産の管理等をお願いする本人を「委託者」
- 財産の管理等を任される人を「受託者」
- その財産による利益を享受する人を「受益者」
この、利益を享受の意味が少々難しいのですが、例えば、次のような事です。
- 自宅を信託財産とした場合であれば、諸税の支払いや、維持・修繕等は受託者が行い、そこに居住する利益を、受益者が享受します。
- 信託財産とした不動産を売却した場合であれば、売却諸手続きは受託者が行いますが、これにより得た売却代金は、受益者のものです。
- 投資信託等であれば、その管理・処分等諸手続きは受託者が行いますが、配当や売却益は受益者のものです。
- 非上場株式であれば、議決権行使は受託者が行いますが、配当金は受益者のものです。
- 賃貸アパートであれば、入居や家賃管理、維持・修繕等の諸業務は受託者が行いますが、賃料は受益者のものです。
- 預貯金であれば、その管理は受託者が行いますが、これにより購入したものは受益者のものですし、受益者のためにのみ使わなければなりません。
何となく、イメージが湧きましたでしょうか?
基本的に、家族信託は、委託者と受託者による、契約によって成り立ち、受託者の財産の管理等は、契約内容に従い、行っていく事となります。
家族信託をすると、財産名義が変わるけど、贈与税等は掛からない。
家族信託をすると、その契約において、信託財産としたものの名義は、委託者である本人名義から、委託者○○受託者△△のような形で、受託者の名義に代わります。預金、不動産、証券その他同様です。
財産を、他人の名義にすると、通常でしたら、贈与税や譲渡所得税といった、いわゆる流通税が掛かります。しかし、家族信託であれば、この流通税は掛かりません。但し、委託者と受益者が同一である事が必要となります。これが別になってしまうと、流通税(信託の場合、贈与税)が一括で課税されてしまいます。
そのため、一般的に、家族信託契約を組む際には、委託者と受益者は同一の形で行います。なお、贈与税は掛からずとも、不動産の名義変更であれば、登録免許税が掛かりますし、証券等の信託であれば、移管手続きにおいて解約手数料が掛かる場合もあり、諸手続きの費用が掛かる事は覚えておきましょう。
登録免許税は、固定資産税評価額を基準に、次の通りとなります。
- 土地 0.3%
- 建物 0.4%
家族信託の受託者は誰でもなれるか、報酬は?
家族信託の受託者には、基本的に誰でもなれます。妻や夫、子や孫、兄弟姉妹に友人・知人といった個人に限らず、法人でも可能です。また、受託者は有償も可能です。但し、営利目的で、複数の家族信託の受託者となる事は出来ず、弁護士や司法書士等専門家の場合、複数でなくとも、受託者となる事はリスクが大きく、引き受ける専門家はいないでしょう。
一方で、例えば、子が父と母双方と家族信託契約を結び、有償で受託者となる事は、事業性を欠き、断言は出来ないものの、可能であると考えられます。
受託者の業務は、その責任が重く、契約内容にも差異はあるものの、端的に大変です。しばしば、後見人にご家族が就いて、その業務の大変さに後悔したという声を耳にしますが、家族信託における受託者も同様です。そのため、ご家族とは言え、受託者業務の報酬を定めておいた方が良いでしょう。
受託者が家族で大丈夫?
家族信託契約における受託者は、ご家族でもなれるわけですが、財産の名義が変わり、その管理・処分権は受託者であるご家族に移る事となるため、ご不安を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。この点、受託者の権限は、信託法と契約内容により制限されます。そのため、これに反した行為は、法的には行えない事となります。ただ、親族後見人の場合でもトラブルが起きるように、その可能性は捨てきれません。
このような不安が拭えない場合には、信託監督人という、受託者の業務を監督する人を契約で定めておくと安心です。
家族信託の注意点
家族信託は、非常に柔軟で、個々のお悩みに応じたご契約が可能な優れた制度です。しかしながら、法律が創られてから日が浅く、注意しなければならない点もございます。
- 遺留分の取り扱いが不透明
- 銀行口座が作れない可能性がある
- 証券会社等が対応していない事がある
- 融資対応可能な金融機関はほとんどない
遺留分のような法律的な注意点の他、法律上は問題ないのに、社会実態上対応出来ないといった事が多々ございます。
そのため、家族信託契約を行う際には、法務・税務といった観点のみならず、その内容に、事実上の実現性があるかを精査する事に注意が必要となります。
家族信託の種類と使い道
財産を預けて管理してもらう家族信託は、その契約内容次第で様々な問題を解決する事が可能です。主な家族信託の種類と使い道を知っておきましょう。
資産凍結対策としての家族信託
使い道
- 高齢になり、日々の金融資産や賃貸物件の管理が難しくなった時や、認知症による資産凍結リスクの備えとして
- 認知症により、本有料老人ホーム等に入る資金確保として不動産売却が出来なくなることのないように。
福祉型信託
使い道
- 重度の障害があり、金銭等の財産を適切に維持、管理、運用が難しいお子様がいる場合に、その両親が面倒を看ていく事が困難になった後も、適切な財産管理がなされるための備えとして
共有不動産のトラブル回避
使い道
- 不動産共有者の中に高齢の方がいる場合等、将来の建替えや売却が出来なくなるリスクの備えとして
- 円滑な不動産管理を将来に渡り継続するための備えとして
祝福される子連れ再婚のため
使い道
- 成人したお子様のいらっしゃるような方が再婚される場合、将来の相続トラブルを回避し、お子様から祝福されるご結婚を実現するため。
子、孫と直系血族のみに相続させたい
使い道
- ご自身の子、孫と、直系の血族にのみ財産を相続させていきたい場合、これを実現するため。
やり直せる事業承継
使い道
- 事業承継は、一度行えば、やっぱり適任ではなかった等と戻すことは出来ませんが、信託を利用する事で、これが可能となります。
家族信託のメリットと費用相場
メリット
家族信託のメリットは、遺言書や任意後見等、他の制度では困難な希望を実現する事が可能である点に尽きます。家族信託をするか否かは、ご自身の望みを叶えるために、代替手段があるか否かで判断されると良いでしょう。
専門家費用の相場
家族信託契約の構成構築から契約書作成までの費用相場は、概ね、信託契約による登記報酬含め、信託財産の価額の1%程とお考え頂いて差し支えないでしょう。その他、遺言書作成や任意後見契約、継続的支援等、お客様のお望みに応じて、必要若しくはされた方が良いご契約・お手続きが生じますので、その料金も確認しておくと良いでしょう。
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